カシとの出会い
研究者の男と別れたかった。
最初10分でも私に会いたいと言っていた研究者の男は、付き合って半年もするとメールでは会いたい会いたい書いておきながら、会う日程を決めてくれない口だけの男になっていた。
別れたかった。
その男と精神的にも肉体的にも離れたかった。
そして私は元同僚の時と同じ手を使った。
パートナーを探してサイトをさまよった。
カシに出会った。
カシは、柔らかく丁寧な文章を書く人だった。
ただ丁寧でも有無を言わせないことを書く時があった。
カシは
「何度メールをやり取りしていても分からないことがあるから早めに会いたい」
と書いてきた。
私は断れなかった。
戸惑いながらも私が会う候補の日を2つ挙げたら、カシは早い方の日を選んだ。
カシに最初に会った時、カシは私を見つめた。
それが何秒かはわからない。
わからないけれど、私は視線を避けるように外の景色を見た。
カシが私を見つめた時間は、私は永遠のように長く感じたけれど、カシは後からほんの1秒くらいだって言って、笑った。