不器用な男の『一生懸命』は反則だ
ケッキが私をコンサートに連れて行ってくれた。
コンサートホールまでは私の家から特急で2時間半かかり、さらにドレスコードがあるコンサートだった。
そんなコンサートは1万円以上するだろうし、交通費も1万以上はするだろうが、ケッキは「ミィは今無職だから、俺が払うわ。」といって全て出してくれた。
研究者の給料なんてたかが知れてるだろう。
それでも私にお金を使ってカッコつけようとするケッキに本当に幸せな気持ちになった。
当日はコンサートホールまで車内では手をつなぎ、外ではケッキの腕にそっと自分の腕を絡ませて歩いた。
背の高い私はヒールを履いてケッキと一緒に並ぶとケッキの背を楽々とぬいてしまう。
それでもケッキは「ミィを連れて歩けるなんて幸せだ。」と嬉しそうに言ってくれた。
ケッキは私をコンサートホールまで不器用ながらも一生懸命エスコートしてくれた。
初めての道の道順を一生懸命探し、タクシーをつかまえて、歩く時は私を車道側にしないようにしてくれた。
不器用なケッキが本当に愛おしい。
不器用なケッキが可愛く感じるのはケッキに私が恋をしているからだろう。