記念写真
カシと2回目の旅行に出かけた。
ロープウェイに乗って山頂まで登り、山頂の展望台でカシと一緒に景色を楽しんだ。
そんな時、カメラマンに声をかけられた。
「記念のお写真お撮りしますよ、買う必要はありませんから。」
よくある観光地商法だ。
カシと私は、携帯電話のカメラでカメラマンに撮影してもらった。
カメラマンは自分のカメラでも撮影していたけれど、写真を買うつもりはなかった。
展望台から降りる時、カメラマンが言った。
「お二人とも良い笑顔で撮れてますよ、1枚どうですか?」
渡された写真を見ると、カシと私、本当に幸せそうな顔で笑っている。この写真の中の二人は、まるで全世界から祝福されているんじゃないかと思うほどの笑顔だ。
ついさっきまで全く買うつもりなどなかったのに、私は写真が本当に欲しくなった。
欲しいのは写真じゃない。
写真じゃなくて、みんなに認められるカシとの関係であること、それはよくわかっていた。
わかっていても写真が欲しかった。
カシに連れられて、一旦はカメラマンの前から離れたけれど私はカシに言った。
ミィ「ねぇ、カシ、私、あの写真が欲しい。」
カシ「えっ?何?」
ミィ「大切にするから、あの写真が欲しいの。二人とも笑顔ですごくよく写ってるもん。」
カシ「、、、。」
カシ「でも、、、あの写真、家族に見られたらどうするの?携帯電話みたいにロックできないよ。」
ミィ「見られないように隠しておくから。見たい時だけそっと見て、それでまた隠すから。」
私は最後駄々っ子のようにカシにお願いした。
カシ「・・・」
カシ「ほら、ミィ見てごらん。さっき携帯電話でも記念写真撮ったでしょう?俺の携帯電話の写真だってすごくよく写ってるよ。」
そう言ってカシは私に携帯電話の画面を見せてくれた。
カシ「ミィの携帯電話も出してごらん。ほらミィの携帯電話でも記念写真撮ったでしょう?これもすごくよく写ってるよ。」
カシは私の携帯電話の写真を見るように私に促した。
私はそれでも写真は欲しかったけれど、赤子をあやすように時間をかけて説得するカシを見て、ワガママはいけないと思った。