不倫の孔に堕ちました

ひょんなことから不倫の孔に落ちた私。 それから抜け出せなくなりました。 今は3人の男の間をゆらゆらと行き来しています。

私は不倫の孔に堕ちました。
堕ちてから孔から抜け出せなくなりました。
不倫の孔は幸せの孔なのか、地獄の孔なのか、、、。

馬頭星雲

元彼が「星を観に行こうか。暖かい服装が必要だよ。」と言った。


研究者の彼は歩く化学辞典だ。
植物でも生物でも星ででもなんでもよく知っている。
私は二つ返事で了承した。


私は深夜、家を抜け出し、迎えに来てくれた彼の車に乗り込んだ。
彼が向かった先は数十キロ先の山の上の広大な敷地。
光が一つもないその場所は、曇っているものの空一面に星が瞬いていた。


彼は「あー、少し雲がかかってるなぁ。」と残念そうだったが、私は雲の切れ目から顔を出す星を眺めて、ひとつずつ全て元彼に質問した。


ミィ「あれはなんていう星?すごく光ってる。」
元彼「あれはふたご座じゃないかな。」


ミィ「あの四角の星はなに?」
元彼「御車座だよ。六角形になってるでしょう。」


元彼は寒そうに私を背後から抱きかかえ、同じ方向がみえるように抱き合いながら星を鑑賞した。


元彼「ほら、ミィ、オリオン座見える?」
ミィ「見えるよ、3つの星が並んでるもん。」
元彼「あの3つの星の近くに馬頭星雲っていう星雲があるんだよ。」
ミィ「馬頭星雲、、、、どんな星雲なの?」
元彼「星雲が馬の頭の形になってるんだ。」


元彼は双眼鏡を取り出して覗き込み、馬の形は絶対見えないけどなぁ、、、と笑いながら、双眼鏡でその星雲を見せてくれた。


そんな彼の口から紡ぎ出される言葉は、私を魅了する。
「不倫のくせに何を言ってんだか」とか「頭がお花畑で」とかそんな言葉が遠くから聞こえそうだ。
でも私は今まさに元彼にメロメロなのだ。

執着と同情の行き着く先

カシは距離を置く前に私と会いたいと言った。

私はカシに「どこに行くの?」と聞いたが、カシは「ヒミツ」とだけ言った。


ーーーー

当日、カシと私は朝の8時30分に待ち合わせた。

私がカシの車に乗り込むと、カシは無言のまま車を走らせた。

私は車内で努めて明るく振る舞ったが、カシは元気がなかった。


カシも私も別れの話は切り出さなかった。

カシはそっと私の手を握ったが、私は振りほどかなかった。


カシの車はどんどん山道を登っていく。

山は紅葉真っ盛りだった。


カシに「本当に日本の紅葉は綺麗ね。日本の紅葉は世界一らしいわ。」というと、カシは少し笑って「落葉樹の種類が豊富なんだろうね。」と言った。


その後、車は視界のひらけた場所に到着した。

そこは山と山の谷間が見える隠れ絶景スポットだった。


カシが車を停めて、車から降りた。

私も続いて車を降りた。


私達の目の前に広がる紅葉は驚くほど素晴らしく、濃赤、赤、黄、橙、茶、緑と数え切れない暖色がまだら状に山を飾っていた。

私が感嘆の声をあげると、カシは「思った通りの紅葉だ。」と呟いた。


カシはそっと私を後ろから抱き寄せて言った。


「ミィがいないと太陽がいなくなったようだ。眠れないし、ご飯の味もわからない。どんなにみっともなくてもいいから、ミィの彼氏でいるうちに全力で別れることを阻止したいと思ってる。ずっと一緒にいて欲しい。ずっと一緒にいて欲しいんだ。」


とカシが私の首に顔をうずめ、繰り返し言った。


私は涙が溢れて止められなくなって、泣きじゃくった。


カシは私を愛しているわけじゃなくただ単に執着しているだけだとわかっていても、私はカシに同情しているだけなんだとわかっていても、もうこれ以上カシを追い詰めることなんてできないと、そう思った。


執着と同情の行き着く先はどこになるんだろう。

ご主人にバラすよ

カシは私が別れをほのめかすと、常軌を逸した発言をするようになった。


カシ「ミィ、時々、新聞の死亡欄見て。」


カシ「元彼は詐欺師だよ。ミィの心を操って操作する詐欺師。」


カシ「元彼とは絶対に長く続かない。俺は助言する。その後、俺のところに戻ってきても俺は付き合えない。」


極め付けはこれ。


カシ「元彼とミィが付き合ったら、俺、ご主人にバラすよ、不倫のこと。」


ミィ「・・・。」


ミィ「カシはそんなことしない。私が一番わかってる・・・。」


カシ「いや、俺、何するかわかんないわ。」


ミィ「カシは絶対にそんなことしない・・・。」


・・・こじらせた。本当にこじらせた。


私は、カシを刺激しないように、元彼とすぐ付き合うのではなく、まず3ヶ月間カシとも元彼とも距離を置いて考え直すことを了承した。


この判断が吉と出るか凶と出るか私にはわからないけれど、私には選択肢が思いつかない。


どうやってみんな穏便に別れているんだろうか。


教えてほしい。