100%応援するという言葉と曇り顔
懐石を食べに行った。
数年先まで予約がとれない知る人ぞ知る懐石料理のお店。
偶然友人がそのお店で働いていることを知った私は、
「急なキャンセルが出たら教えて。私行くから。」
と言ってあった。
コロナの影響なのか、友人から週末キャンセルが出たとの連絡があり、大喜びでケッキと懐石デートをしてきた。
大ぶりの桜の枝が前菜と一緒に出てきて、「こんなご時世だから、ここでお花見をしていってくださいね。」と言われた時は、暗い話ばかりのなか、急に春がきたような気持ちになって、ケッキと目を合わせて笑った。
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懐石デートの後に、ケッキのお部屋でセックスをし、そしてくっついたまま二人で30分ほど熟睡した後、目を覚ましたケッキがいった。
ケッキ『俺さ、別の大学に行こうと思っているんだよ。まだわからないけれど、すごく良さそうなんだ。』
ケッキの希望する勤務先は私の住んでいる場所からは遠い遠い大学だった。
(あー、とうとうきたか。)
彼は1か所にとどまって、安定して仕事をして満足するタイプではない。
常に挑戦し、ステップアップしていくのをよしとするタイプだ。
きっとそんな日が遅かれ早かれくるだろうと、そう覚悟していたが、もうその日がきてしまった。
『今、この大学にいるのは、ミィのそばにいれるから。今はもうそれだけの理由でこの大学にいるんだ。』
そういったケッキに、私は
『すごくいい話だわ。ケッキがキラキラとさらに輝いているのが目に浮かぶよう。私は100%応援したいと思う。』
と言った。
でも、私の顔が曇ったようだ。
そんなポジティブな言葉を言いながら、私は本当に悲しそうな顔をしてしまったようだ。
ケッキはそんな私をみて私の頬を撫でて
『俺達は愛し合っているんだから、大丈夫だよ。距離が離れたくらいで何かある仲じゃもうないから。』
と言った。