父の死
一緒に住んでいた私の父が亡くなった。
母も随分前に天国へ旅立ったから、弟が喪主をすることとなった。
私は葬儀が終わって一段落するまで、カシとの連絡を一切絶っていた。
仕事の調整、親戚への連絡、葬儀の準備等の目まぐるしい毎日を過ごしながら、ダブル不倫とは、お互いの冠婚葬祭を一緒に喜びまたは悲しむことができない関係なんだなぁと、人生で重要度の高いイベントを一緒に乗り越えられない関係というのは結局どういう関係なんだろうと漠然と考えていた。
カシは、お通夜や葬儀、父の仕事の引継ぎ等で忙しい私を全く助けることができない自分がもどかしいようだった。
一段落してカシに連絡した時に、カシは言った。
「俺、、、、ミィの実家でお線香上げさせてくれない?」
私は本当にびっくりして、
「今は実家はカシを入れてあげられるほど綺麗になってるけど(笑)、子どもや弟がいつ帰ってくるかわからないしね。」
と、少しおどけて言った。
カシの本気度がわからなかったから。
カシは静かに私に言った。
「線香上げてミィのお父さんに言うよ。安心してくださいって。ミィは俺が面倒みますって言うよ。」
私はカシに騙されているのだろう。
ダブル不倫の関係なのに、カシは実際どうやって私の面倒をみるというのだろうか。
そんなことを考えながら、でもそれでも何度もお線香をあげにいきたいというカシに感謝して、信じてみようかと、信じてみたいと思うようになった。